ついにやってきました!あこがれの地、スペインバスク地方。3日間の食い倒れ旅行記の始まり始まり~~。
初日のランチはイギリスのグルメ誌が選ぶ2011年世界のレストラン・ベスト50で3位に輝いたレストランMugaritz。ミシュランでも2つ星を獲得しています。このレストランは賛否両論評価が大きく分かれていたのですが、せっかくの機会なので、ということでお邪魔することにしました。
場所はサンセバスチャンのバスターミナルからタクシーで12分(18ユーロ)のところにあります。レストランのまわりは羊や牛が放牧されていたりしてとてものどかな雰囲気です。
1時からの予約でしたが、私たちがなんと最初の客です。早速キッチンに案内して頂きました。キッチンの入り口の壁にいきなり日本語が・・・。「友情の木の枝、ありがとう」と書かれています。これは2010年2月に火災に会った際、日本のムガリッツファンの皆さんが沢山の支援をしてくれた、その気持ちを記憶しておくために刻まれたものだとか。著名な方の名前も並んでいます。
キッチンは私のイメージしていたものよりもずっとこじんまりしていました。修業中という日本人のシェフのお一人(お魚担当)が、各セクションの説明してくれました。毎日のメニューはシェフがその日に仕入れたものによって決めるのだそうです。仕入れの数にはもちろん限りがあるので、各テーブル出てくるものが異なるとか。キッチンは地下にもあって、地下のキッチンは主に下ごしらえ用で、室温が15度に保たれているのだとか。下で働くスタッフは寒いのでジャケットを着て仕事をしていると言っていました。
そしてレストランのモットー(?!)も刻まれています。自然・都会、平穏・混乱、簡素・素朴、精密・即興、不測・伝統、遅さ・速さ。
レストランは木の雰囲気が落ち着いたシンプルな空間です。
テーブルに着くと、カードが渡されます。
どんな挑戦が待っているやら。期待が高まってきます。
日本語のフレーズを沢山知っているウエイターの方曰く、最初の5品は手で食べる前菜なのだとか。
まずは、クリスタルのシートにのせられた胡椒のプラリネとクモ蟹のムース。パリパリのクリスタルシートはでんぷんとお砂糖で作られたのだそう。おせんべいと蟹味噌でしょうか。
starch and sugar crystal spotted with pepper praline and corals |
grilled pueraria focaccia |
うやうやしい紙に包まれて出てきたのは何とりんご。紙を空けるとふわっとカルダモンの香りが漂います。普通のりんごなのですが、そうとは思えない美味しさ。実験大好きのムガリッツのことですから、これ一品にもここまで完成するのには相当の工程があったのではないかと思われます。
fragrant fruit in a paper wrap |
このおせんべい、味は日本人には昔懐かしいえびせんべい。でも口に含むとすぐに溶けてしまいます。不思議です。2切れだけ添えられたパプリカ(たぶん)には沢山のこしょうとスパイスがまぶされていますが、一緒に食べても美味。今メニューを改めて見て初めて理解したのですが、こちらのおせんべい、実はソースだったようです。常識を覆すとはこういうことですね。
crunchy sauce with peppers |
テーブルには実はこんなお皿が飾られています。なるほど。
手で食べるメニューの最後は「食べられる石」。見た目も触った感じも石そのもの。でも中身はじゃがいもなのです。甘くてしっとりしていてうまみが凝縮された美味しいじゃがいもでした。下に敷かれている砂ももちろん食べることが出来ます。にんにくのマヨネーズが添えられていましたが、素材が十分美味しいので付けない方が断然美味しかったです。
edible stones |
ここまでの5品はなぜか煽られるようなスピードで出されました。モットー(?!)の一つであるの「速さ」の演出でしょうか?
次は自家製モッツアレラ。ほんのりとスモークした紅茶の香りが付けられていて、シンプルで美味しい一品でした。そして、このガラスは日本製!
home made mozzarella, whey emulsion infused with smoked black tea |
ヘーゼルナッツと豆のシチュー。上にのっているのは何と、貝殻の中の膜を特別な方法で取り出したものだとか。ヘーゼルナッツは昔懐かしいおばあちゃんの煮豆風。貝の膜はパリパリとした食感で美味しかったです。
hazelnut and beans stew |
spoons of bechamel and califlower |
pork noodleswith "arraitxiki" extract and toasted rice |
パンはしっかり小麦粉の味がして美味しかったです。もっと食べたかったのですが、お腹のスペースの関係で2口くらいしか食べることが出来ず本当に残念。
「チーズに見えますが、さて何でしょう?」と言って出された一品。風味はチーズ。食感はゆば。正解はミルクから作ったものなのだそう。発酵させていないのでチーズではないのだとか。海の幸あり山幸ありのユニークな一皿でした。
curd cheese, in its own rind, mushrooms and coastal herb |
次に出されたのは温かい白パン。これは中華万頭!小さなスプーンには右からオリーブ、くるみ、炒め玉ねぎのペーストが入っています。スプーンによって甘みを感じたり苦味を感じたり(炒め玉ねぎとのマッチングは冬に食べる肉まん味!)。味覚を最大限刺激してくれます。温かい時にはあまり感じなかったのですが、冷めてから頂くとこの白パン、チーズのようにクリーミー。一品で5回くらい美味しい色々な発見のある一皿でした。このパンの大きさには少し改良の余地があるかもしれません。
three spoons of a creamy white bread |
牛タンの繊維。パリパリで面白い一品。タイトルも面白いです。
Shhhhhh... cat got your tongue! |
silky bread stew, infused with pink geranium leaves covered with crab meat |
portion of hake and milky reduction of stewed turnip sprouts, citric cream and salt grains |
textures of coastal fish |
シンプルなステーキの登場です。これまで色々工夫されたお料理の数々だったのですが、最後は素材勝負。でも一ひねりあったのは添えられていた牛脂を乳化させたもの。こちらを付けて食べるとお肉の甘さが際立ちます。でも私はやっぱりそのまま食べるのが美味しかったです。そして個人的にはこしょうがあると嬉しかったです。
piece of beef, grilled steak emulsion and salt crystals |
ここで、デザート前のコースはおしまい。ウエーターさんが追加が必要ですか?チーズはどうしますか?と聞いてくれましたが、私たちはもうギブアップ。でも両隣のスペイン人は追加でもう1品ずつ頼んでいました。脅威の胃袋!!!
ここで腹ごなしのため中庭をお散歩。
最初のデザートは見た目も美しい秋のアイスクリーム。濃厚なクリームにくるみの風味がよく調和しています。くるみの殻は本物そっくり。チョコレートで出来ています。
broken walnuts, toasted and salted, cool milk cream, armagnac jelly |
creamy pasty of brioche |
お皿に乗ったドームの形のビスケットはテーブルで割られました。裏にはアイスクリーム貼り付けられていてパリパリと頂きます。子どもに返った気分で楽しみます。
sweet grain biscuit with anis and flowers |
最後のデザートは植木鉢の中に入ったお花。上にはチョコレートで出来た釘がささっています。何を語っているのでしょう。植木鉢の土もチョコレートや種で出来ていて美味しく食べることが出来ました。
nails and flowers |
食後はお庭でコーヒーを楽しみます。
最後まで演出は欠かしません。小さな白い錠剤状の物質の上に紅茶をかけておしぼりにしたり・・・。
この小屋には六本木の吟龍から贈られた板が飾られていました。
最後にウェイターさんにインタビューして聞いたところによると、現在サービススタッフは15人。キッチンでは35人が働いているとか。うち日本人は3名。キッチンスタッフの半分は交代制で、世界各地の「ムガリッツで修業をしたい!」というやる気のある人を面接で選んで受け入れているのだとか。このようなスタッフにはムガリッツが宿舎と食事を提供します(・・・と言えば聞こえは良いのですが、はっきり言ってしまうと無給ということのようです・・・。)。年間150ものポストがあるとか。
ムガリッツ、5感をフルに活用しながら食を楽しむことのできるそんな素敵なレストランでした。???と思う作品もありましたが、食材に対するステレオタイプを覆してくれるような経験が出来るのもこのレストランのすばらしさだと思います。スタッフはみな親日家で、サービスも気持ち良かったです。ごちそうさまでした!!
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